ご挨拶

文学学術院教授
中東・イスラーム研究コース運営主任
ようこそ、
早大の中東・イスラーム研究コースへ。
ここでは、2017年4月に開設された、文学部の「中東・イスラーム研究コース」、文化構想学部多元文化論系の「中東・イスラーム文化プログラム」、大学院文学研究科の「中東・イスラーム研究コース」の3つをまとめてご紹介します。
中東・イスラーム研究は、人類の過去をひもとき、現在を掘り下げ、未来を照らす学問です。その豊饒な歴史や過去の叡智から学び、混迷を深める現代のグローバル世界を鋭くえぐり、未来への眼差しと構えをより確かなものとします。
中東地域やイスラーム文明は、《過去》において、メソポタミア・エジプトの古代文明の後継者たるギリシャ・ローマの文明や思想を発展的に継承し、ヨーロッパを通じて世界へ伝えました。世界史の中で、確かな足跡を残してきたと言えましょう。また、《現代》の世界について考えるためには、中東・イスラームの理解が不可欠です。その際に、われわれは単に出来事の表層を追うのではなく、その背景を深く掘り下げ、複眼的かつ丹念に要因を解きほぐしていく必要があります。《未来》はどうでしょうか。イスラームは遠くない将来、世界で最大数の信徒を抱える宗教になると推測されています。他宗教との共存についても、いっそう熟慮されるべきでしょう。また、その際にどのような形のイスラームが選択されるのか、そのあり方も問われることでしょう。
これらのコースは、中東・イスラームについて本格的に学び、世界で多方面にわたって活躍する人材や研究者を育成することを目的としています。そして、そのための語学教育、留学支援、海外の研究機関との共同研究や教育プログラムを実践していきます。また、そのために中東現地と欧米の研究教育機関とをトライアングルで結び、重層的な研究・教育体制の構築を目指します。
これらのコースが研究対象とする範囲は、コース名称に示されています。すなわち、中東・イスラーム研究コースの「中東」の部分は、中東という地理空間内であればムスリム(イスラーム教徒)やその社会に限らず、そこに展開してきた他宗教の信徒も研究対象となることを示しています。また、「イスラーム」の部分は、イスラームに関連するものであれば、世界中どこにあっても研究対象となることを意味しています。
同様に、研究の方法論についても、歴史学や人類学、文化研究や思想研究などに限定するものではありません。とりわけ学部段階にあっては、多様な研究手法を自由に選択することができます。複数の方法論を併用した地域研究や文化研究も可能です。
今日、人文系の学問や中東研究に対する逆風の存在が、世界的に指摘されています。そのなかで敢えて立ち上がったこれらの新コースは、世界中多くの研究者の期待を集めています。荒野(あれの)を彷徨して沃野へ至り、オリーブの園で語り合いましょう。